クリアで澄んだビールが濁ったビールより美味いというわけではありません。ただ、多くのホームブルワーにとってクリアなビールをつくることは、よりプロフェッショナルばビールに一歩近づけた気分にさせるのも事実です。また、イメージ通りのビールに仕上げる為に、ビールの濁り具合もコントロールすることができるのは、ホームブルワーにとって技術の一つとも考えられます。

ここでは味の良し悪しは一旦置いておいて、どうすればクリアなビールをつくることが出来るかに焦点を当ててみたいと思います。

クリアなビールをつくるには、まずビールの濁りの原因を考えてみる必要があります。濁りの原因は主に、タンパク質、タンニン(ポリフェノール)、イーストの3つです。その他にもありますが、主にこの3つを押さえておけば大丈夫です。タンパク質は麦芽や小麦などから、タンニンは麦芽の殻から由来するもので、ビールを冷やすと白濁するチルヘイズとよばれる現象を引き起こします。イーストはイースト自体が濁りの原因です。この3つの要素をコントロールしてクリアなビールを目指します。

 

1.プロテインレストを実施する

約50℃の温水で、麦芽のタンパク質をイーストの栄養分となるアミノ酸に分解する酵素を活性化させることでタンパク質を分解させる、マッシング初期工程です。基本的にはモディフィケーションが済んでいる麦芽にはプロテインレストは必要ありませんが、いつも実施するようにしています。

 

2.タンパク質の少ない材料を選ぶ

たんぱく質の多い材料としては、主にウィート(小麦)や、ダークカラーの麦芽です。これらを必要以上に多くつかうとタンパク質が多くなりますので、濁りの原因となります。ウィートビールやダークビールをつくる際には濁りは関係ありませんので気にする必要はないですね。

 

3.アイリッシュモスを使用する

アイリッシュモスは海藻由来のゼラチン質で、煮込み終了30分前に投入することで、冷却時にタンパク質とタンニンをすばやく沈殿させる働きがあります。その他タブレット型のWhirlflocなどもありますが、こちらは煮込み終了5分前の投入でOKです。

 

4.麦汁の冷却を出来る限りすばやく行う

麦汁を冷却する際に、チラーを使用してすばやく冷却することで、タンパク質とタンニンの沈殿を促進させます。15分ほどで冷却できると理想的です。冬場は水が冷たいので有利ですね。アイリッシュモスとの併用でさらに効果を発揮します。

 

5.完成したビールを冷暗所に保存する

ボトル詰め後に、常温で貯蔵して炭酸ガスをしっかりとビールに溶け込ませた後は、冷暗所(冷蔵庫)などで冷やしておくことによりイーストを沈殿させます。これによりイーストの濁りを低減できますが、振らないようご注意を。

 

6.フロキュレーションの高いイーストを使用する

フロキュレーションとは、イースト発酵において凝集の程度を表し、高いフロキュレーションのイーストは、より早く凝集して発酵容器の底に溜まるようになります。その分、イーストの濁りがはやく軽減されるのでその分クリアになります。ただし、フロキュレーションが高ければ高いほど、すぐに凝集して活動を止めてしまうので、発酵度が低い傾向があり、高比重のビールで使用すると残留糖分が多くなりがちです。代表的なのはEnglish yeastです。

 

7.ファイニング剤(清澄剤)を使用する

代表的なのは、粉末ゼラチンです。煮沸消毒した水に溶かして発酵完了の数日前に投入することで、タンパク質とタンニンを沈殿させます。ただし、上記の方法でも十分クリアなビールをつくることができるので、ここまでする必要があるかは疑問です。(実はやったことありません。。。)