favicon 煮沸(ボイリング)

煮沸鍋を火にかけ、麦汁を煮込む工程です。この工程の主な目的は以下のとおりです。

  1. 麦汁を煮沸消毒する。
  2. ホップを煮込むことで、苦み、フレーバー、アロマ付けを行う
  3. ホットブレイク(タンパク質凝固)により不要なタンパク質を沈殿させる

サンプルレシピを参考に、実際の工程を見てみましょう。

favicon 1.煮沸とホットブレイク

麦汁は、できるだけ強い火力でグツグツと勢いよく煮込みます。こうすることで、ホップの苦み成分(α酸)を麦汁に溶け込ませたり、麦汁の不快な味や香りとなる成分をできるだけ揮発させたり、ホットブレイクを促進したりします。ホットブレイクとは、タンパク質を凝結させることを言います。麦汁には、ビールには不要となるタンパク質が溶け込んでいますが、それを煮沸することで凝結し、その後沈殿させることで麦汁から取り除きます。ビールを煮込んでいくと、麦汁の中に卵スープにあるような、白い小さな凝固物が確認できると思います。これがホットブレイクです。また、吹きこぼれの心配もあるので、鍋には蓋をしないようにします。

favicon 2.苦みの元となるホップを投入する

ホップには、ルプリンと呼ばれる物質があり、その中にはレズンとオイルと呼ばれる樹脂が入っています。ホップの苦みはレズンから、ホップのアロマ(芳香)はオイルから生み出されます。レズンには、α酸とβ酸が含まれているのですが、α酸を麦汁で煮込むことにより、異性化と呼ばれる化学変化をおこさせることで、麦汁に苦みを付けます。α酸の苦み成分を抽出するには、45分〜90分煮込む必要がありますが、一般的には1時間の煮込みとなります。それより長く煮込めばより苦みを出すことができます。α酸の量は、ホップの種類により異なりますが、よりα酸が多いホップ(ビタリング・ホップ)を苦み付け用として使用します。アロマ成分のオイルは、煮込むことによりアロマが揮発してしまいますので、長時間に渡って煮込みません。 サンプルレシピでは、ナゲットホップ15g(ペレット)を麦汁に投入し、60分煮込みます。次のホップの煮込み時間は30分なので、タイマーは30分にセットしておきます。

favicon 3.フレーバー(風味)の元となるホップを投入する

風味付けのホップは、苦み付けと香り付けの中間といったところで、ほどよく苦みを付け、ほどよく香り付けをします。20分〜40分煮込むことで、ホップの種類による特徴ある風味付けをします。一般的には約30分間の煮込みとなります。ホップは、α酸の低い種類が好まれる傾向がありますが、つくりたいビールの風味により異なりますので、特に決まりはありません。 サンプルレシピでは、ノーザンブルワー15g(ペレット)を30分煮込みます。この後のホップは火を消した後の投入ですので、タイマーは30分にセットしておきます。

favicon 4.アロマ(香り)の元となるホップを投入する

ビールづくりには麦芽の使用が前提となりますが、使用する麦芽は大きく分けて以下の通りです。

  • オールグレイン(穀物麦芽100%)でつくるフルマッシング
  • モルトエクストラクト(麦芽を糖化し、濃縮したものを使用。モルトエキス)
  • 穀物麦芽とモルトエクスラクトを併用したパーシャルマッシング

※マッシングとは、麦芽を糖化し麦汁をつくることを指します ビアトレでは、基本的にオールグレインでつくるフルマッシングでのビールづくりを紹介していますが、最初はモルトエクストラクトや、パーシャルマッシングでのビールづくりから始めてもいいと思います。モルトエクストラクトでのつくり方は、モルトキットなどを販売しているサイトなどを参照してください。ホップが既に添加されていて、煮沸もいらず、ただ水と混ぜてイーストを投入すればいいだけのようなものもあり、とても簡単です.

favicon 5.ワールプール

麦汁の煮沸が終わったら、ホットブレイクでできたタンパク質凝固物や、ホップカスを次の発酵容器に移さないで済むように、まとめておきます。ワールプールとは、相対性理論で有名なアインシュタインが、授業中コップに紅茶の葉が入っている水をかき回していたら、茶葉がコップの底の中心に集まっていることから発見した、渦巻き現象です。これを、煮沸釜で適用します。へらを使って、麦汁を20〜30回ほど勢いよくかき混ぜます。これだけで、タンパク質凝固物やホップカスは煮沸釜の底の中心に集まりますので、発酵容器に麦汁を移す際に、このトゥルーブ(残留カスなどを総称してトゥルーブと言います)が入り込まないように注意します。

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