favicon  ホップのはたらき

ホップは、アサ科の蔓性多年草(複数年に渡って生存する)で、ホップの雌株には毬花と呼ばれる花をつけますが、この毬花こそがビールの原料となります。つまり、毬花をつけないホップの雄株は、ビールの原料にはなりません。 ホップは、ビールづくりにおいて、苦味、フレーバー、アロマ、泡などに重要な影響を与え、さらに雑菌の繁殖を抑え、ビールの保存性を高める働きもあります。 ホップ毬花の花弁の根本には、「ルプリン」と呼ばれる黄色の粒子が存在し、この小さな粒子の中には、「オイル」と「レズン」が含まれています。ビールには、このルプリンに入っているオイルがアロマを、そしてレズンが苦味をつくりだします。

faviconホップの苦味について

ビールの苦味は、ホップ毬花に含まれるルプリンの中のレズンがつくり出します。このレズンには、α酸とβ酸が含まれており、ビールの苦味成分のほとんどは、このα酸から形成されています。α酸は「フムロン」とも呼ばれ、α酸の値は、ホップ毬花の重量に対するα酸の重量の割合をパーセント(%)で表します。ホップのα酸はホップの種類によって異なり、α酸度の多いホップほど、苦いビールをつくるのに適したホップということにないります。このα酸の値は、ビールづくりにおいてとても重要となりますので、よく覚えておきましょう。 ホップに含まれるレズンα酸(フムロン)が、ビールの苦味に影響を与えることは分かりましたが、どのようにしてビールに苦味をつけていくのでしょうか。レズンは液体に溶け込みづらいので、麦汁にホップを浸けただけでは苦味成分を抽出することはできません。そこで、麦汁とホップを煮込むことにより、α酸を液体に溶け込ませるのです。フムロンはこの煮沸により、イソフムロン(イソα酸)へと変換され、麦汁に溶け込みます。このイソフムロンがビールの苦味成分なのです。 大事なことは、ホップを麦汁で煮込むことにより、苦味成分(α酸)を溶け込ませること。そして、この煮込む時間により苦味が変わることです。基本的に、煮込み時間が長くなればなるほど、苦味が強くなります。(麦汁の比重も苦味に影響があり、比重が低いほど苦味が強くなります)

favicon ホップの添加方法

1.ファーストウォートホッピング(First Wort Hopping)

First Wort Hopping (FWH)は、最初(First)の麦汁(Wort)の段階でホップを漬け込む(Hopping)ことを言います。麦汁を煮沸する前からホップを入れておくことで、麦汁とホップが接触する時間を長く取ることができます。ホップのアロマオイルは不溶性であり、水に溶け込みづらい性質をもっており、さらに揮発性なので、煮沸すると揮発してしまいます。FWHでは、ホップと麦汁の接触する時間を長くとることでホップを酸化させ、アロマオイルを溶け込ませるテクニックです。ただし、FWHで投入したホップは、長時間煮込むことになるので、その分ビールが苦くなります。その為、FWHで使用するホップは、α酸の値が低い種類のものを使うようにします。

2.苦味づけ

麦汁とホップを煮込むことにより、α酸を麦汁に溶け込ませることで苦味をつけます。苦味づけは、ビターリングと呼ばれます。一般的には、45分〜90分ほど煮込みますが、それ以上煮込んでも効果はあまり期待できないと言われています。この麦汁の煮込み時間と、ホップの種類で苦味を調整しますが、α酸の値が高いホップほど苦味がでますので、α酸の高いホップを使用すると経済的です。逆にα酸の低いホップを使用しても苦味はでますが、その分ホップの量を増やすか、煮込み時間を長くする必要があります。また、苦味づけはホップを長い時間煮込むので、ホップアロマは揮発してしまう為、アロマづけの効果はありません。

3.風味(フレーバー)づけ

ホップを20分から40分煮込むことで、α酸を麦汁に多く溶け込ませて苦くなりすぎないように、またホップアロマも揮発させすぎないようにすることで、麦汁に風味をつけます。風味づけは、フレーバーリングと呼ばれます。様々な種類のホップを使用できますが、比較的α酸の低めのホップを使用することが多いようです。また、色々なホップを組み合わせることにより、風味に深みを持たせることができます。

4.香味(アロマ)づけ

ホップを煮込みの最終段階で投入し、ホップアロマを揮発させずに麦汁に残るようにすることで、ビールに芳香をつけます。香味づけは、フィニッシング(最終仕上げ)と呼ばれます。煮込む時間は15分以下で、時にはフレームアウト(火を止めてから)時に投入することで、よりアロマを残そうとします。使用するホップは、香味づけしたいタイプのアロマホップにより様々な種類、組み合わせがあります。

5.ドライホッピング

ドライホッピングは、ビールの仕込み時ではなく、ビールの発酵が落ち着いた頃に、発酵容器に直接ホップを漬け込む方法です。こうすることで、ホップアロマを最大限に引き出すことができるのです。ホップ投入のタイミングは、イーストの投入から発酵が落ち着く1週間後くらいに、5日〜1週間前後漬け込みます。発酵が盛んなタイミング(泡がブクブクしている時)には、アルコールがまだ完全にできていないので汚染の恐れがあり、発生する二酸化炭素がアロマを放出してしまうので、必ず発酵が落ち着いてから投入します。直接ホップを投入しても問題ありませんが、ホップバッグ(ナイロンの網状の袋)を使用すると、後でホップカスをビールに入れないように簡単に取り出すことが可能です。

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