VorlaufやRecirculation(再循環)と呼ばれる工程ですが、しっくりくる言葉がないので、フィルタリングとしてみました。何か良い呼び方があったらどなたか教えてください。マッシングが終わった麦汁は、非常に濁っていて、また麦芽カスも混じっている状態です。この状態でビールをつくっても問題はないのですが、ビールの仕上がりも濁ったものになります。僕はよりクリアなビールが好みなので、このフィルタリングという作業をします。濁ったビールが好みの方は、この工程をスキップしてください。 方法はとても簡単で、バルブから濁った麦汁をピッチャーなどで受け、そのままマッシュタンの上から麦汁をゆっくり戻す、という作業を数回にわたって実施します。ポンプがある方は、ポンプを使って構いません。最初の数回はしばらく濁った麦汁ばかり出てきますが、マッシュタンの麦芽がフィルターの役目を果たし、徐々にクリアな麦汁に変わっていくのがわかると思います。完璧に澄んだ麦汁にすることは難しいのですが、ある程度の透明度になるまで繰り返しましょう。この透明度がそのままビールの仕上がりになるわけではなく、もう少し透明度のあるビールに仕上がりますので、ご安心を。
(1)バッチ・スパージング(一括スパージング)
バルブから抽出を始めると、マッシュタンの麦汁が減ってきます。そして麦芽の表面が麦汁からでる直前に、スパージングを行う方法です。湯量に決まりはありませんが、マッシュタンの大きさや、湯を用意する鍋の容量に応じて決めて構いません。麦芽の表面が麦汁に浸かっている状態を維持する必要があるので、もしスパージング水が追いつかない場合には、抽出を止めてしまってOKです。スパージング用に大きめの鍋があればできますが、スパージング中はつきっきりです。
(2)コンティニュアス・スパージング(継続スパージング)
麦汁を煮沸釜に抽出している量と同じ量のスパージング水を、マッシュタンに追加していく方法です。別途スパージングを用意する湯量を全て鍋に用意しておき、マッシュタンの上からに追加できるような仕組みが必要です。仕組みを作ってしまえば、手間がかかりませんが、それなりの道具が必要になります。 注意すべき点は、麦芽が空気に触れている時間が長くなると酸化が進みますので、麦芽が湯に浸かっている状態をキープしながら、麦汁を抽出できるように調整します。また、スパージングで使う湯の量ですが、これはマッシュタンの上げ底部分の水の量、麦芽の量、麦芽の吸水率、煮沸時間(蒸発量)、煮沸釜のロス、発酵容器でのロスなどによって上下します。 計算方法はあるのですが、自分の道具に合わせて基準となる量が分かるようにしておくと良いと思います。非常に大まかな設定で、煮沸釜の麦汁の量が22ℓ〜24ℓとなるように、スパージングの量を調整すると良いでしょう。サンプルレシピの場合、こちらも大まかな数字ですが、スパージングの量は15〜19ℓほどで、煮沸釜の麦汁の量を23ℓの麦汁となるようにスパージングしましょう。 最初は、20ℓほどのスパージング用の湯を用意しておいて、自分の使用する道具に合わせて調整していけばいいと思います。十分な量だと思いますが、足りなければ湯を沸かせばいいだけですので、あまり神経質にならないで大丈夫です。ちなみに、スパージングをしないで済むほどのマッシュタン容量で、十分な量の麦汁をマッシュした場合には、スパージングは必要ありません。この場合、一番搾りになりますね。つまり、煮沸に必要な麦汁の量がマッシュタンに最初から用意してあれば、全て一番搾りになるわけです。