イースト(酵母)は、単細胞性の真菌(きのこ、カビの仲間)で、生物です。生き物ですので、他の原料であるホップや大麦などの植物とは違うという認識をしっかり持つことが重要です。ビールにおけるイーストの役割は、大きく分けて、アルコールをつくる、二酸化炭素(炭酸ガス)をつくる、風味をつくる、の三つです。酵母には様々な種類が地球上には存在しますが、ビールに使用する酵母は、ビールイーストと呼ばれるビールづくりに適した酵母を使用します。この酵母は大きく分けて次の二つに大別されます。
投入されたイーストは、1mlあたり5千万個になるまで増殖しながら、以下の順に活動します。それぞれの活動は順に発生しますが、各ステップが完全に終わってから次のステップに進むわけではなく、ある程度平行して進みます。
1.適応期(約12時間〜24時間)
麦汁の酸素を取り込み、イーストの増殖・発酵を促す為のエネルギーを蓄えます。
2.発酵期(3〜7日間)
呼吸によってエネルギーを得たイーストは、麦汁の中を浮遊しながら、糖分をアルコールと二酸化炭素に分解しながら増殖します。麦汁の上面にはクロイゼンと呼ばれる泡を確認することができます。クロイゼンは、麦汁のタンパク質とイーストから構成されていて、発酵容器には緑や茶色がかったカスのようなものが確認できますが、これはタンパク質やホップ、イーストなどの色ですので、問題ありません。
3.調整期(コンディショニング)(2〜3週間)
麦汁の糖分をほとんど消費すると、イーストは発酵を止め、休眠準備をしながらゆっくりと容器の底に沈殿します。イーストケーキと呼ばれる休眠状態のイーストは、目で確認できます。ほとんどのイーストは休眠状態となりますが、まだ活動しているイーストもいて、発酵期に副産物として出来た不快な匂いや味の素になる化合物を緩和させる働きがあります。