麦芽は多くの種類がありますが、ここでは購入が比較的容易と思われる麦芽の種類を紹介します。麦芽のカラーは、麦芽メーカーにより異なりますので、参考程度としてください。
ビールや麦芽のカラーを表す単位として、以下の3つの単位が使用されています。非常に面倒ですが、使う人や国によってその単位が異なります。
°L (Lovibond) ロビボンド
1883年に、J.W. Lovibondによって使われたカラー単位で、古くから使用されています。
EBC (European Brewing Convention)
ヨーロッパで使われているカラー単位。日本でもよく使われる。
SRM (Standard Reference Method)
アメリカで使われているカラー単位。ロビボンドの単位に近い。麦芽自体のカラーではなく、仕上がったビールのカラーを表す単位。
カラー単位の変換式
SRM = EBC × 0.508 EBC = SRM × 1.97 SRM = (1.3546 × °L) – 0.76 °L = (SRM + 0.76) ÷ 1.3546 単位変換は面倒ですので、以下のページで計算すると簡単です。 麦芽カラーの単位変換
低温で時間をかけながらじっくりと焙燥(加熱乾燥させることで発芽を止める)することで淡色、麦芽の糖化酵素が残っている麦芽。酵素が働くため、麦芽を糖化することができる。麦芽のベースとなる基本的な麦芽。淡色なのでビールに色をつける効果はあまりない。大麦には六条大麦と二条大麦がありますが、現在ではビールとして使用されるのはほとんどが二条大麦です。2-Row Maltとは、二条大麦のことを指します。ベースモルトとなるのは、大麦の他にも、小麦やライ麦などがあります。
ペールモルト
Pale Malt/Pale 2-Row Malt
°L: 2~4 EBC: 3.8~8
- ラガー、エールからスタウトまで、すべてのビールのベースモルトとして使用可能
- 北米産、ドイツ産、イギリス産などがあり、ドイツ産はボディが若干強くなる傾向
- 現在では二条大麦が主流
ピルスナーモルト
Pilsner Malt
°L: 2 EBC: 3.8
- ピルスナーなどの淡色ビールに使用。ラガーモルトとも呼ばれる
- 麦芽の中ではもっとも淡色で、どのようなスタイルのビールにも使用可能
- 現在では二条大麦が主流
ウィート(小麦)モルト
Wheat Malt
°L: 1.9~2.2 EBC: 3.5~4.5
- ヴァイツェンなどの小麦ビールのベース
- 75%以上になるとロータリングで詰まるので、75%以下となるように大麦麦芽と併せて使用
- 少量の使用で泡持ちを良くする効果がある
ライ麦
Rye
°L: 3.7 EBC: 8.4
- ライ麦特有の酸味やフルーティ感がある
- ライ麦麦芽として日本での入手は困難ですが、フレークされたライ麦は入手可
- フレークされたライ麦は他のベースモルトと併せて使用
ベースモルトを高い温度で焙燥させることで、様々なカラーと風味を生み出します。カラーの濃淡や風味は焙燥させる温度や時間で異なります。キルンとは焙燥炉のことで、「kiln(窯で焼く)」という動詞としても使われます。糖化酵素はあまり強くないので、ベースモルトと併用します。
ミュンヘンモルト
Munich Malt
°L: 5~7 EBC: 12~17
- ビールのボディを強めたり、モルトフレーバを豊かにする
- 濃色ビールに適しており、ビスケットのようなフレーバも生み出す
- 糖化酵素はベースモルトの半分ほど
ビエナモルト
Vienna Malt
°L: 2.4~3.6 EBC: 5~8
- ミュンヘンモルトほどの強さはないが、効果はほとんど同様
- ミュンヘンは濃色に、ビエナは淡色ビールに適している
- 糖化酵素はベースとミュンヘンの中間ほど
カラピルス
Carapils
°L: 1.7~2.4 EBC: 3~5
- デキストリンモルトと呼ばれ、イーストに糖化されない糖をつくる
- 10%〜20%ほどを加えることで、ビールにボディを与え泡持ち効果あり
- 尚、Carapilsは商品名
マリス・オッター
Maris Otter
°L: 3~4 EBC: 6.5~9.2
- 豊かな風味と深いモルトフレーバを提供
- 昔ながらの製法でつくられる麦芽で、一部の地域のみでつくられる
- 収穫率の低い品種ですので少し高価だが、ブルーワーに人気がある
カラメルモルトは麦芽を高温で焙燥しますが、このときマッシュと同様にでんぷんを糖化させて焙燥させますので、糖がカラメル化し、麦芽にカラーと風味を加えます。焙燥度合によってカラーとカラメル臭は様々です。酵素は残っていないため、糖化を目的とせず、ビールにコクと甘み、フレーバをつけます。
クリスタルモルト15〜150
Crystal Malt
°L: 15~150 EBC: 38~400
- カラメルモルトの別称で、カラメルがクリスタルのように光沢をもつことからつけられた
- カラーはメーカーや焙燥度合いにより様々
- 5-20%程度混ぜて使用し、色と量の組み合わせは無限大
チョコレートモルト
Chocolate Malt
°L: 340~450 EBC: 910~1200
- ブラウンエール、ダークビール、ポーターやスタウトをつくるときに使用
- 少量でもおもったより色はつきやすい
- チョコレートのような色や香りからつけられた名前で、チョコレート自体は入っていない
ブラックモルト
Black Malt
°L: 550-600 EBC: 1466-1600
- ポーターやスタウトに使用
- チョコレートモルトよりさらに黒く焦がしたモルト
- チョコレートモルトに比べ、甘みが少なく、苦味と焦げ臭が特徴
ローステッドバーレイ
Roasted barley
°L: 670 EBC: 1786
- 発芽させていない大麦を焙煎したもの
- 甘みがなくシャープな苦味が特徴で、苦いコーヒーのようなハードな味わい
- ポーターやスタウトに使用するが、ごく少量の使用でレッドビールにも使用可