煮込み終わった麦汁は、急速に冷やす必要があります。その理由としては以下の通りです。
(1)DMS(Dimethyl Sulfide)というオフフレーバーの発生を少なくする
詳細はどこかで触れます。
(2)コールドブレイクを促す。
コールドブレイクとは、不要なタンパク質を凝結させることを言います。ホットブレイクでのタンパク質凝結は、全体の7割程度、コールドブレイクでのタンパク質凝結は、全体の3割程度と言われています。
(3)麦芽が71℃以下になると、バクテリアが取り付きやすくなるので、その期間をできるだけ短くする
(4)イーストの活動に適した温度まで冷やす必要がある。
イーストは、45℃以上になると死滅してしまいますので、注意が必要です。 沸騰させた麦汁を、イーストの活動に適した温度(約20〜27℃)まで、一気に冷却します。時間は、約15分以内を目安に冷却できるようにしましょう。冷却方法は以下の方法があります。
(1)イマージョン・チラー
コイル状にした銅管を麦汁に浸け、その銅管の中に冷却水を通すことによって、麦汁を冷やします。もっともベーシックな冷却方法で、洗浄や消毒などの扱いが簡単です。使用する際にはきちんと洗浄しておく必要がありますが、ピカピカにしておく必要はありません。
(2)カウンターフロー・チラー
イマージョン・チラーと逆の発想です。若干ややこしいのですが、イマージョン・チラーよりも効率的に冷却できます。イマージョン・チラーでは、コイル状の銅管には水を流す事で麦汁を冷却しましたが、カウンターフローでは、銅管の中にさらに銅管を通す2重構造になっています(念のためですが、銅管でなくてもOKです)。この2重構造の内側の管に麦汁を通し、外側の管に水を流すことにより、麦汁を冷却します。麦汁が冷却水の管の中を通りながら冷やされるといったらいいでしょうか。また、イマージョン・チラーのように2重構造になっていない、単純なコイル状の銅管を、別途に用意しておいた冷却水に浸け、その銅管の中に麦汁を通すことによって、麦汁を冷やすこともできます。ビールサーバーのようなものと想像するといいかもしれません。イマージョンよりも早く冷却できますが、銅管内部の洗浄や消毒が必要になるので、扱いがとても大変です。銅管内は目が届きませんので、熱湯などで洗浄・消毒する必要があります。
(3)プレート・チラー
何層にも重ねたステンレス内に冷却水と麦汁が通るプレートを交互に配置し、冷却する方法です。熱交換の面積が広いので効率が良いですが、若干高価である点と、内部の洗浄や消毒が必要な点がデメリットです。プロの方も使用しています。 ここでは、イマージョン・チラーを例に説明していきます。 まず、麦汁の移動先となる発酵容器とチューブを洗浄・消毒しておきます。方法は「洗浄・消毒」を参照してください。また、エアロックもゴム栓を含め消毒し、一旦煮沸した水や、ウォッカを入れた状態で用意します。ウォートチラーについても、洗浄・消毒をしておくと良いでしょう。麦汁が沸騰している最中に、煮沸釜にウォートチラーを入れて煮沸消毒としてもいいですが、火傷に注意してください。ウォートチラーの片側を水道水の蛇口に取り付け、もう一方の排水側をシンクなどに排水できるようにしておきます。ワールプールが終わった煮沸釜に、ウォートチラーを入れ、水道水を銅管に通します。排水側からは熱いお湯がでますので、注意してください。 水道水の水量を多くすると、排水側から冷たい水がでてくるようになるので、早く冷えているように見えますが、麦汁内での熱交換が目的ですので、麦汁の熱を水に乗せて排出するイメージで、少しゆっくり水を流すようにします。ぬるま湯程度が丁度いいかもしれません。この時、アイスバスなどを併用すると、より冷えやすくなりますが、煮沸釜に蓋をするなどしてバクテリアなどの混入を防ぎましょう。温度が25℃前後まで下がったら、冷却は完了ですので、ウォートチラーを煮沸釜から出して、蓋をしておきます。麦汁の温度が、イーストの活動に適した温度よりも高い場合には、オフフレーバーが発生しやすくなりますので、きちんと冷却しておくことが大事です。温度が下がった状態の麦汁は、非常に汚染されやすくなりますので、ここから麦汁に触れるものは、全て洗浄・消毒されている必要があります。 冷却が完了したら、麦汁を発酵容器へ移す作業です。