今でこそクラフトビールや様々な種類のビールを飲ませてくれるお店は増えてきたが、少し前までは種類の豊富なビールが飲みたい時はパブ、つまりアイリッシュパブやブリティッシュパブなどで海外のビールを楽しむ事が一般的でした。それでも飲めるビールと言えば、ギネスやキルケニー、バスやボディントン、少し珍しくてもヒューガルデンなどで、今のクラフトビールを飲ませる店に比べると種類は少なく、国内外の多くのビールが飲めるようになったのは本当に喜ばしいことです。

その代わり従来型のパブは衰退傾向にあり、昔から馴染んだ雰囲気のあるパブがどんどん姿を消していくのを見るのは、やはり少し寂しい。パブ独特の雰囲気や、賑やかにビールを飲むスタイルが好きなので、是非頑張ってほしいと思います。

一方でクラフトビールを飲ませてくれるお店には、この辺りの「場」としての空気感が従来のパブとは少し異なり、洗練された感じでしんねりむっつりワイングラスなどでお上品に評論家よろしく飲んでいるお店が多い気がして、ガヤガヤしている雰囲気が好きな者にとっては少し残念な気もしています。もちろん個性的な「場」の雰囲気をもつ大好きなクラフトビールを飲ませる店もあるので一概には言えないが、日本では少し独特な方向に向かっているようで、これはこれで一つのスタイルとして確立していくのかもしれない。楽しみ方は人それぞれなので別にいいのだが、コーヒーのテイスティングのように「ジュッ」と吸い込み、口をもぐもぐさせて飲んでいる人を見かけたときは、さすがに少しゾッとしてしまった。

従来型のパブがクラフトビールに対して距離を置いているように見えるのは、スペースや設備だけの問題ではくこの辺りにもあるような気がしてならない。

どのようなスタイルにせよ、クラフトビールが短期的なブームでなく地に足の着いたものとなる事を祈りたいが、この辺りも日本は独特で、クラフトビールはあくまで飲んで楽しむものであって、つくって楽しむものでないところに少し地盤の弱さを感じてしまう。海外でクラフトビールが良く飲まれているいているところでは、必ずその前段階で、ホームブルーイングがしっかりと根付いている。そしてホームブルーイングに飽き足らず、自分のビールを世に出したい情熱から、ブルーパブなどをオープンさせることがほとんどです。そしてそのようにして市場に出たクラフトビールへのリスペクトから、ホームブルーイングでそのビールのクローンをつくって楽しむのも、クラフトビールの楽しみ方のひとつなのです。